在外研究 ・ ヨーク通信


ヨーク・シティ・フットボールクラブ
2004/05シーズン最終戦(4月23日)



つづき:
おバカで一途なイギリスのサポーターたち







ヨーク・シティの本拠地 キットカット・クレセント は、

ヨークのわが家から歩いてわずか5分強のところにあります。




まわりはテラスハウス。

英国風の長屋ですが、はっきり言って、

ヨークのなかでは労働者街というか、

そんなに所得が高くない人が住むようなところ、かな。






こんな感じのところ。




これでも家賃は1ヶ月500ポンド=10万円近くはするでしょう。




日本流に言えば、築80年、2LDK、風呂なし、シャワー付、ってところですけどね。




イギリス人の平均所得は日本の3分の2くらい、

日本円にすると年収300万円以下の人も多いと聞きますから、

ほんとにどうやって生活してるのか、不思議です。






こっちはちょっと綺麗な通り。これだとかなり高そう・・・








テラスハウスのなかには、ふつうの家だけじゃなく、

こうやってB&Bを営んでいる家も多いのです。




長屋のなかの一世帯がB&Bで、

右隣がふつうのサラリーマン世帯で、

左隣は学生がルームシェアしてるとか、そういう感じ。




ベッド(宿泊)とブレックファースト(朝食)で、ヨークだったら25〜40ポンド前後。

日本円で5000円から8000円くらい。




イギリスはホテルもめちゃめちゃ高くて50ポンド以上はするから、

旅行するなら、こういうB&Bがおすすめ。




結構清潔で食事も非常にいいところが多いように思います(ちゃんと選べば)。




でも、看板にあるように、まず間違いなく禁煙なので、気をつけるように。




まぁイギリスに来るなら、というか欧米に行くなら、

それを契機に禁煙した方がいいでしょうね。




タバコ吸ってると、泊まる場所もないし、家を借りるのも無理です。




私が見た不動産屋の物件はすべて、

ペットとスモーカーはおことわり

でした。




まともな人は吸わない、というのが常識なのでしょう。

1箱800円くらいするから、タバコ吸う人(含子供。吸う子供は10歳前後で吸い始める)は、

麻薬などの犯罪に手を出したりすることも・・・。




有色人種を見て罵声を浴びせるのも、大抵がタバコ吸ってる十代の白人の若者。


近寄らないほうがいいです。





ヨークはイギリスのなかでももっとも平和な都市なので、まず大丈夫ですけど、

残念ながら、十代のクソガキのなかには、どうしようもないのもいます。




さて、こういう街並みのなかにあるのが・・・






ヨークシティFCの聖地 キットカット・クレセント




キットカットって、変な名前ですが、

みなさんご存じの、あのキットカットです。






Have a break, have a KitKat!


これ、実はヨークの名産品。




かつてはイギリスでロンドンに次ぐ大きな都市であったヨークも、

いまでは観光鉄道チョコレート産業を中心とする

中小都市、歴史の街なんですが、



そのチョコレート産業の中心が、

日本ではコーヒーで有名なネッスル。




ヨークのサッカーがこんなに弱くなっちゃった大きな原因は

チームの経営状態がここ数年最悪だったため。

この本拠地サッカー場も 経営難で存続が危うく なりました。




そこでお金を出してくれたのが・・・




Have a brake, have a KitKat!




この会社でした。




そこで競技場の名前が昨年末、

創設以来のブーサム(地名)からキットカットに変わったのです。




最初はみんなすごく違和感があったんですが・・・

(阪神甲子園球場が、食い倒れ球場とか、かに道楽球場とかになったら、

いくら関西人でもちょっとイヤでしょう?)





いまでは何ともないから、

慣れというのはおそろしいものです。




さて、入場しましょう。








相手方、アウェイのサポーターは、

上にあるように一般のファン(ヨークのファン)とは別の入り口からしか入れません。




いまは警備もきちんとしているので、

イングランドのサッカー場はとても安全ですが、

昔はフーリガンとか、喧嘩などもすごく多かったですからね。




でも、今は本当に管理されているというか、

ちゃんとしてます。




何でもありのイタリアやスペインの無秩序な競技場とは大違い。




発煙筒を炊くなんて、とんでもない。




選手への人種差別もかつては大問題でしたが、いまは人種差別ヤジを飛ばせば、

監視カメラで特定されて警察に逮捕されます。




ところがスペインなんか、いまでもひどい。




イングランドの代表チームとの試合で、

イングランドの黒人選手がボールを受けると、

一斉にサルを囃し立てる真似をするので、

英国のファンはみんな怒ってます。




いくらサッカーが強くても、スペインは最低。






なんだか刑務所の入り口みたいな敵サポーター専用入り口




さて、掲示のように入場料は13ポンドなんですが、

これには初めて来たとき、びっくりしました。




だって、下の下の下のそれまた下のリーグなんだから、

せいぜい1000円くらい、ひょっとしたら500円くらいで入れるかな、

と思っていたんです。




ところが、2600円!




ずいぶん取るんだな、と思いました。 半端じゃなく弱いのに・・・




サッカーのファンなんて、貧しい人が多いから、

(ラグビー=上流階級 サッカー=下層階級 というのは、いまでも完全に間違ってるとは言えないと思う)

1回2600円というのは、相当大変だと思います。




40試合で10万円以上・・・




しかも、アウェイの試合なんて、もっと大変ですから。




300キロも400キロも離れた場所の、片田舎のサッカー場に、

それもイングランドで100位と110位なんていう弱小チームの試合に、

わざわざ4時間も5時間もかけて出かけていくんですよ、みんな。




電車だとカネがかかるから、自家用車で5人乗りで行く、

というのが多いと思いますが、

イギリスはガソリン代も1リットル180円くらいですから、

とても宿泊までは出来ず、みんな日帰りでしょう。




往復10時間くらいかけて。

ほんとに偉いというか、

アホというか、




これがイングランドの底辺のサッカー事情、

イングランドのほんとの庶民の姿です。




イングランドのアホは偉い!




とくに今日の最終戦の相手、

Farnborough (← どこだ、それ?)は

すでにコンファランスから降格することが決まっている

小さな村を本拠とする、弱小中の弱小チーム。




それでも、(さすがに数は少ないけど)来てましたね、サポーター。






もう順位も決まり、来期はコンファランスから脱落することが決まっているのに、
わざわざ400キロ以上の旅をしてヨークまでやって来た、相手方
Farnborough のサポーターのみなさん






しかも、これ見てわかるように、

ゴール裏の敵方サポーター席は、屋根もないし、椅子もない。




2時間近く、立ちっぱなし。




雨の日は2時間、雨に打たれっぱなし。




イギリスでは毎日のように雨が降るし・・・




冬の寒い日など、これ、ほんとにつらいです。




これで2600円。




アホとしか言いようがない。




でも、偉い。





きょうはかなり少なめで、

結局 Farnborough のサポーターは 62名 と発表されました。




ちょっと強いチームだとこれくらい↓、200人くらいはやって来るんですけどね。










ヨークは、もともと上のフットボールリーグでそれなりに活躍していたチームですから、

サポーターもそれなりに多く、

アウェイの試合でも数百人は行ってるんじゃないかと思います。




でも、最近はほんとに負けてばかりなので、

今日は最終戦というのに、

ホームのお客さんは1993人




私が来てからはだいたい毎試合観客数は二千数百人でしたが、

昨年までのリーグ時代は、4000人くらいは普通に入ってたみたいです。




すいてるから、見やすくていいんだけど、ちょっとさびしい・・・




こっち↓が、反対側のゴール裏、ヨークのサポーター席。






デビッド・ロングハースト・スタンド!




デビッド・ロングハーストというのは、

試合中に亡くなったヨークの選手の名前です。




彼を追悼・記念して、サポーターが陣取るこのスタンドに名前が付きました。




ここも、椅子がなくて立ち見席なんですが、

実はこういう構造の競技場はプレミアリーグでは認められません。




警備上の理由で、プレミアリーグでは必ず客を着席させなきゃいけないんですが、

貧乏なコンファランスではそんなことなし。




カネがないから、ほとんどのチームは椅子席なんてたくさん作れない・・・。




でもヨークだって、プレミアシップに昇格したら、

当然この競技場も規定通りに改修しなければいけないわけです。




たぶん300年後くらいの話ですが・・・




アウェイ側と違い、ホーム側はゴール裏でも屋根があって雨の日でもいいんですが、

(しかしちょっと露骨な差別ではありますね。同じ入場料なのに・・・)

さすがに年寄りには立ち見席はしんどい・・・

ということで、私は最初は熱狂的貧乏サポーターの集まるゴール裏で見てたんですが、

最近は座って観戦しています。






ここがバックスタンド。




1ポンド追加料金を払うと、ゴール裏からここに移動できる。




総計14ポンド、2800円。




ここは椅子があって座って試合を見れるので、もっぱらここを愛用してました。




それに、やっぱりゴール裏のサポーター中核部隊に近づくのは、

なんとなく怖いというのもあります。




何をびくついてるんだ、それでも男かと言われるかもしれないけれども、

プレミアリーグだったら、

荒っぽいというマンチェスター・ユナイテッドでもリバプールでも、

たぶん怖くないですよ。




でもヨークは怖い。




なんで平和な街ヨークでそんなこと言うかというと、






2000人以上のお客さんのなかで、

白人じゃないのは私1人だけだからです。





これはね、やっぱりちょっと警戒します。




イギリスは今では多民族国家で、

有色人種の割合は2割くらい、5人に1人はそうだと思います。




ロンドンなど大都会に行くと、むしろ白人のほうがすくないくらいですが、

ヨークは非常に特殊な街で、歩いてるのは白人がほとんど。




サッカーの世界はもっと極端で、

ヨーク・シティのチームは選手全員が白人です。




イングランド代表やプレミアリーグの強豪が黒人主体なのからすると

考えられないような構成なんですが、

なぜかそうなんです。




そしてそれを応援するサポーターも、

私以外は全員白人。




ヨークで有色人種といったら、

留学生かインド料理の店の人くらいでしょうが、

後者はあまりサッカーに関心がなさそうだし、

留学生(ほとんどが中国人)はありそうだけど、

自分のお国のチームは応援しても

ヨークのチームには関心がないのかな?




関心があっても、この入場料では留学生にはちょっと無理かもしれない。




とにかく、いつもひとりぼっちです。




2000人のなかで自分だけ肌の色が違う

という状況を経験したことある人は

まずいないでしょう。





すごいよ。




自意識過剰ではなく、実際に相当目立っていると思います。




だから、あまり羽目を外すようなことは控えてるんですけどね。




さすがに暴力を振るわれるようなことは絶対ないと断言できるけれども、

罵声くらいは浴びせられる可能性、なきにしもあらずだから。




みんな負けが続くと気が立ってくるし・・・




まぁそんなこともあるので、

貧乏なみんなが愛用する、いちばん安い、ゴール裏の人混みを避け、

追加料金を払って、すいているバックスタンドで観戦することが多かったんですが、


きょうは最終戦なので、

贅沢して、ここ↓で見ました。







メインスタンド!




16ポンドもするんだよね。     ← カネの話ばかり




弱いのに・・・




3000円以上かけて、必勝態勢。




ここからならベンチも近く、監督の動きも見えます。










でも、3200円・・・    弱いのに・・・




家族で言ったら、1回1万円以上かかる!   弱いのに・・・




1ヶ月でサッカーだけで数万円!    弱いのに・・・




交通費入れたら、1シーズンで数十万円?    弱いのに・・・




でも、応援せずにはいられない・・・    弱いのに・・・





これが現在下位の下位の下位のそのまた下位のリーグであるコンファランスで

下位に低迷して苦闘する

ヨーク・シティ・フットボール・クラブを応援する市民の姿です。




経営陣の放漫経営による経営難に直面して、

昨年ついにサポーター達はカネを出し合って

このクラブの経営権を買い取りました。

いまこのFCを経営しているのは、サポーターたちです。




みんな普通の労働者(たぶんかなりの数の失業者も混じってると思う)で貧乏なのに、

相当なカネを出し合ってるんですが、

それでもカネは全然足りず、いい選手を雇うことが出来ません。




来期はこれまでのようにユースチームを維持できないということで、

ユースリーグ脱退の予定もあったのですが、

地元紙で監督が「助けてくれ」と呼びかけて、

みんなで募金活動を開始。




なんとかユースチームも維持できそうです。




とにかく自分たちのチームなんだから、

貧乏でもカネを出し合います。 弱いのに・・・









さて、そんなミンスターマンの最終戦は・・・






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